慶應義塾大学医学部 坂口光洋記念 システム医学講座

研究テーマ

長期的な研究目標は、転写調節因子ネットワークの構造と動態の解明、幹細胞生物学の基礎研究と臨床応用、遺伝学と情報科学を基盤とした医療システムの構築を実現することである。特に、大規模網羅的実験的アプローチとコンピュータを用いた情報生物学的アプローチの開発を通じこれらの目標を達成する。

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システム生命科学のビルディングブロックとなる転写調節因子誘導幹細胞の作製とその網羅的解析 哺乳類ゲノムにコードされている2000個近い転写調節因子を思うままに誘導できるES細胞のコレクションを作る。137個の転写調節因子を操作できるマウスES細胞のセットを完成しているが、ヒトES細胞でも同様のコレクションを作成していく。これらの細胞は、トランスクリプトームやエピゲノム解析などの網羅的解析による転写調節因子ネットワークの全体像の解明に役立つのみでなく、ビルディングブロックとして組み合わせることで臨床治療で必要とされる体の中の様々な細胞種を作り出していくことに役立てていく。さらに、Synthetic Biologyの重要なツールにもなっていくことが期待される。
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コンピュータを使った情報生物学的アプローチとバイオインフォマティックス さまざまなBioinformatics Toolやデータベースの作成と公開を今後も続けていく。また、20年前に行った遺伝子発現調節の確率的特性の発見と理論化を大規模遺伝子ネットワークに適用するためのアルゴリズムの開発とその計算機シミュレーションへの応用を研究する。さらに、GWASをはじめとする臨床遺伝学、臨床画像解析などを促進するためのアルゴリズム開発などを通じて、臨床に直結した情報科学を進める。
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ES細胞不死化ゲノム安定化遺伝子Zscan4の機能解析と臨床応用 着床前胚とES細胞で特異的に発現しているZscan4は、正常細胞でありながら無限に増殖できるというES細胞にだけしか無い性質の責任遺伝子である。その一過性発現はES細胞でテロメアの組み換え伸長をおこし、また、iPS細胞作成時にはゲノム安定性と質の向上に貢献する。Zscan4遺伝子の発現を自由に調節できるようになれば、細胞や個体の老化を防いだり、若返らせたりすることができるようになると考えられ、幹細胞治療への応用のみならず、抗老化治療への応用が期待される。

イメージ

転写調節因子ネットワークの構造と動態の解明、幹細胞生物学の基礎研究と臨床応用、遺伝学と情報科学を基盤とした医療システムの構築を実現することである。特に、大規模網羅的実験的アプローチとコンピュータを用いた情報生物学的アプローチの開発を通じこれらの目標を達成する。